ゴッド・ブレス・ミー エイズとの闘い』福田慶一郎著 新風舎
を読みました。
最近出版されたHIV,AIDS関連の本をAmazon.co.jpでまとめて頼んでいたんです。箱に入れたままにしてあったのをゴールデンウィークから少しずつ読んでいて、今日この本を読みました。
血液製剤による感染以外で、実名での告白というのは多く目にしていないのでドキドキして読み始めました。
作者は「それにしてもこの病気は患者をとことん孤独にさせるものだ。」と書いていますが、医療従事者も含めてHIVについての知識不足と勝手な想像、それに差別意識が、患者を孤独にさせてしまうんだと思います。
患者本人が自らを守る為には自分の病気について医療従事者と同等くらいの知識を持たないといけないのか、と最初の病院の記述のところでは憤慨してしました。
しかし、歯科医療の件やNLGRの医師会館のことを聞くと、現状は惨憺たるものなんだろうなと感じます。 NPO Livingtogetherのホームページを作っている時に、どこの病院がいいの?ということを良く聞かれました。この本の作者のように地元だと病気などを知られてしまうという恐怖があるので少し離れていて、親身になってくれるところを希望される方が多いように感じました。
静岡県に住んで仕事も地元なのに東京の病院や名古屋の病院に通院されている方もいるそうです。それだけ、拠点病院というものに格差があって、拠点病院という言葉が信頼されていないということの現れだと思います。
静岡県は20カ所の拠点病院があるそうですが、この本に書いているような病院はきっとあるだろうなぁと心配です。
患者を分散するには…という議論が静岡県のエイズシンポジウムでも発言がありました。数カ所の病院に患者が集中しているのはよろしくないんだそうです。でも、治療経験の少ない病院ではこの本に書いているような事は容易に想像できます。
とても読みやすい本ですが、議論のネタになることがいっぱいあります。
読書会などに使える1冊です。
作者のセクシャリティについて子供の頃からの記述がありましたが、彼はたまたまゲイと知り合う機会があって自分をゲイとして認識しています。静岡県のような地方都市だと、男性が好きになるのは異常だからということで自分の気持ちを押さえて、結婚→子供という経緯を経てから、ゲイは異常ではないということを知り、家庭生活は守りつつ男性とHをする既婚者がたくさんいるようです。
この本にも書いてありますが、作者はゲイであることをカミングアウトして書いています。ついHIV/AIDSはゲイの病気だと思い込んでしまいますが、この本はゲイ向けではなくて、誰でもがHIVに感染する可能性を持っていることを忘れてはいけないと思います。
文庫本で価格も安いですから是非読んでみてください。